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ピックアップ事例

おきなわ津梁ネットワーク(平成25年稼働)
沖縄県医師会(沖縄県)
098-888-0087 公式ホームページ

※平成30年3月時点

運用Step

1.運用に向けた文書作成

稼働までに作成した主な文書は以下の通り。

図表:作成した主な文書類
種類 文書名
個人情報の管理
  • ・個人情報保護方針
  • ・情報セキュリティ基本方針
  • ・利用者規定
  • ・利用者マニュアル
同意
  • ・参加同意書
  • ・同意取得運用手順説明書
  • ・同意説明用シート
申込
  • ・参加(利用)申請書
  • ・利用者アカウント申請書
  • ・VPN接続申請書
  • ・VPN接続作業支援依頼書
出所:ヒアリング及び提供資料より作成

2.システム運用保守体制決定

図表:現在の組織図
図表:現在の組織図
出所:沖縄県医師会提供資料

システム運用後には、組織体の変更を行った。

具体的には県医師会理事会の下に「運営協議会」を設置し、そこに医師会、行政、国保連合会・協会けんぽ代表、歯科医師会、看護協会、薬剤師会、理学療法士会等の主だったステークホルダーが参加する。「運営協議会」の開催ペースは年一回程度で、事実上の最終承認機関として事業の大きな方向性を決定する。また、データの取り扱いなどを審議するための「倫理審査委員会」も設置している。


運営の実務を担う組織として「運営実行委員会」があり、1〜2カ月に一回のペースで開催される。「運営実行委員会」は機動力確保のため県医師会の理事会直下に置かれ、疾病別部会から幅を広げた9つのテーマ別の委員が参加する。


「運営実行委員会」には医療職のほか、弁護士・大学教員・行政職員のメンバーも参加する。委員は各テーマのワーキンググループにも参加しており、ここではITに限らず、広範な医療連携について協議される。それぞれのワーキンググループ内の議論で出た「津梁ネットワークで検討すべき課題」を各委員が持ち帰り、「運営実行委員会」で検討する、という流れになっている。


一例として、「脳卒中」に関して協議するワーキンググループは、もともと紙ベースの地域医療連携パスを検討してきた、多職種からなる「おきなわ脳卒中地域連携委員会」であり、長年地域の医療連携を図ってきた各団体が運営実行委員会に参加することで、津梁ネットワークと医療現場の連携をスムーズにしている。


システム保守は県医師会が窓口となり、システム事業者であるソフトウェア・サービスと中部システムサポートが分業して担当している。

3.参加機関の募集・説明・契約

医療機関への参加依頼、「説得は医師が一番早い」

平成24年のシステム仮稼働時の参加施設は19であり、脳卒中の地域医療連携パスに加入する医療機関に参加を呼びかけるかたちでスタートした。1年後の本稼働のタイミングでの参加施設は61となった。急伸の背景には、本稼働から半年が経過したタイミングで事務局側が集中して施設側への説明を行ったことがあった。本稼働から平成28年4月までは利用料無料にしたこともあって参加施設数は伸び続け、一時は200施設を超えたが、有料化後に減少に転じた。


平成29年11月時点の参加施設は131施設。内訳は病院22施設、診療所78施設、調剤薬局29施設、その他2施設となっている。利用料は病院が15,000円、診療所・調剤薬局・歯科診療所が5,000円、介護サービス事業所等が2,000円(いずれも月額利用料)という設定となっている。


薬局や介護サービス事業所は計画当初から話し合いに参加しているものの、加入数はまだ限られるのが現状である。「津梁ネットワークの内容は理解頂いているのですが、医療機関の参加数がまだ少ない現状では、利用料を払ってまで使うメリットが感じづらい、という状況だと思います」(県医師会・徳村氏)。


参加施設を増やすため、仮稼働時から現在に至るまで、県医師会では各郡市医師会や医療機関に出向き、説明会を開催している。

「病院や開業医の先生から必ず聞かれるのは、『津梁ネットワークに参加することに何のメリットがあるのか?』ということです。あとは『どうして利用料が必要なのか?』『その利用者数で入る価値があるのか?』といった質問も多く頂きます」(運営事務局・向井氏)。


「半年前の健診データなんて役に立たない」という意見に対しては、「発症前のデータを経年で見られることは役に立つのではないか」などいろいろな説得方法を試みた。「相手に響いていない」と感じる度にアピールポイントを変えるなど、積み重ねの中で説明手法も洗練されていった。医療者に対しては医師である県医師会の比嘉理事が中心となり、実際の診療場面での使い方や利点を丁寧に説明してきた。


病院では医事課や地域連携室にアプローチし、院長、事務長等に説明を行っている。その後に医師をはじめとした現場の医療者に機能面・使い方の説明、事務職員には手続き等の説明、システム担当者にはシステム回りの説明等、職種ごとの説明会を設けている。


病院の中でも、中核病院に対しては特に手厚い導入支援を行っている。

院内に多職種職によるワーキンググループを立ち上げてもらい、「同意書の取り方・説明の仕方」等の事務テーマや「データの使い方」等の医療テーマについて、自院での展開や現場での活用方法を検討してもらう。これらのワーキンググループには診療で使う「医師」、導入を担当する「システム管理者」、退院調整を行う「地域連携室担当者」、受付等の事務を担当する「医事課」の参加者が欠かせない。県医師会のネットワーク事務局は各種説明資料や患者別のケース資料を用意し、ワーキンググループのディスカッションを支援する役割を担っている。

「最終的にどう運用するのかは病院側の判断ですが、ただ『やってください』と投げても、忙しい現場は絶対に動きません。『こういう患者さんが来たらどう対応しよう』と考えてもらい、きちんと使われるまでフォローするのが我々の役割です」(ネットワーク事務局・狩俣氏)。

4.設備工事・導入

施設側の利用申し込み後にシステムを導入。VPN環境を持たない施設にはその構築から支援する。職種別・当人のみ利用可のID・パスワードを発行して利用する

5.参加患者募集

平成24年の仮稼働時から、患者への説明、同意取得に向けた取り組みもスタートした。


患者側の利用手順は以下の通りとなっている。

・津梁ネットワークに加入する意志を示し、同意書に署名

→利用者カード(利用者番号)が発行される

→加入施設の受診・利用時に利用者カードを提示

→利用者番号と施設ごとの番号が紐付けされた時点でデータ閲覧が可能になる。


利用者カードが発行された時点から健診等のデータ蓄積がはじまるが、患者が各施設でカードを提示しない限り、閲覧はできない。「多少面倒だとは思いますが、どの医療機関にデータを見せるのかは患者さんの判断であり、同意の確認手段としてはその都度カードを出してもらうことが一番確実です。『これは“意思表示カード”ですから、ここには見てほしくないと感じるなら出さないでいいですが、過去のデータを踏まえて診察してほしいと思ったら積極的に出してください』と説明しています」(比嘉理事)。

「カードを紛失する」「複数の医療機関で登録してしまう」といった患者側のトラブルも生じてはいるが、個人情報保護の観点から当面この方式を継続する方針としている。


図表:紐づけの作業の様子
図表:紐づけの作業の様子
利用者カードのバーコードを読み取り、カルテ番号と紐付ける(東部クリニックの比嘉理事)
利用者獲得は健診会場が最も効果的

平成29年11月末時点での利用者数は約3万2000人(利用者カード発行ベース)。利用者への説明・同意書の獲得は、事務局と参加する医療機関・薬局等が担う。医療機関で医療者が説明すると患者側の納得度は高いが、その反面、時間をとられることが利用者増に向けての課題となっていた。


「説明して同意書を書いてもらう作業は、早くて5分、長ければ10分以上かかる。大勢の患者が来る中核病院でこの作業をしてもらうのは現実的ではないので、ここ数年は事務局による獲得に注力しています」(ネットワーク事務局・狩俣氏)。


事務局で独自の説明会を開催するほか、保険者が主催する健康関連イベントに参加する、病院に特設ブースをつくるなど様々な方法を試みた。地元テレビで紹介してもらう、デパートにブースを置くなど、より幅広い層への広報活動も行った。


3年前から始めた、市町村が行う集団検診の会場に移動式の説明ブースを設置し、登録を呼びかける取り組みが中でも高い効果を上げている。これは、健診終了後の住民をブースに誘導してもらい、事務局スタッフが説明を行うもので「今受けてきた健診のデータを共有できる」というわかりやすさと、健康への意識が高まっているタイミングの良さから、ほとんどの人が登録する。

「移動式の説明ブースは、初期は医療機関を中心に回っていましたが、体調が悪くて来院している人にネットワークへ参加するメリットについて説明しても、理解する余裕がありません。体調がよく、かつ健康に関心が高くなっている人が集まる健診会場は説明に最適で、午前中だけで100名の同意を取れたこともありました」(ネットワーク事務局・狩俣氏)。

医療機関での案内は受診機会の多い高齢者が中心だが、健診会場であれば病院に行く機会が少なく、かつ生活習慣病対策のターゲットである中年層を獲得できる、という利点もあった。


さらに、県内大手企業の総務担当に依頼し、企業の「労働安全衛生大会」などで概要を説明し、申込書郵送によって加入する方法もはじまっている。今後はコンビニエンスストアなどの住民にとって身近な場所に申込書を置き、郵送で申し込みができる仕組みなども検討したいとしている。


総務省のクラウド型EHR高度化事業の指定を受け、その要件として平成30年4月までに3万6000人(人口比2.5%)を達成することが当面の目標となっている。


参加医療機関で診てもらう働きかけも

参加施設が限られている現在は、情報共有のために患者への働きかけも行っている。

「急変する可能性のある持病を持つ患者さんには津梁ネットワークの利用者登録をしてもらい、『急変時には病院に行ってこの利用者カードを出せば、治療上必要な大体の情報は伝えられます』と説明します。もちろん、医療機関はフリーアクセスが原則ですから『ここに行ってください』とは言えませんが、紹介時もネットワークの加入医療機関に紹介するようにしています」(県医師会・比嘉理事)。

6.評価・課題整理

図表:ネットワークのイメージ
図表:紐づけの作業の様子
構築当初(左)・現在(右上)・今後(右下)
出所:沖縄県医師会提供資料
◎使われている機能は「調剤と検査データ」 
図表:トップ画面
図表:トップ画面
出所:沖縄県医師会提供資料
図表:詳細情報画面
図表:詳細情報画面
出所:沖縄県医師会提供資料

自身でも診療所を運営する比嘉理事によると、津梁ネットワークの機能で診療時によく使うものは「調剤情報」と「検査データ」だという。

「私の専門は脳ですが、脳ドックを受けに来た患者であれば、以前の特定健診の結果や通っている別のクリニックの処方を見ます。別の病院から来た患者であれば、処方の重複や飲み合わせを確認し、こちらで処方した薬剤情報を共有する、という使い方が多いですね」(県医師会・比嘉理事)。

データや画像は電子カルテからネットワークの画面に簡単にコピーして共有できる。診療所の近くの調剤薬局から患者ごとの残薬や服薬状況の情報が入ってくることも多い。

重要度別のメールを飛ばす機能も

ネットワークには、グループを作った上でVPNの中の画像を含めたセキュアメールがやり取りできる「津梁トーク」機能がある。情報を出すときには、「高・中・低」で重要度のレベルを設定でき、「高」を設定すると、次にその情報を開いたときに確認のアラートが出る仕組みとなっている。

在宅での利用時などで多職種が稼働日や利用者情報を共有する用途が想定されているが、VPN環境下でしか利用できないため、在宅医療や介護などの外に出向く職種からは不便という声も強い。

図表:メッセージ送付画面
図表:メッセージ送付画面
出所:沖縄県医師会提供資料

地域医療連携パスは当初の情報共有のベースとなっていたこともあり、よく使われている機能の一つ。急性期・回復期・維持期に分け、それぞれのデータが入れられるようになっており、退院支援などの局面で利用される。


他にも、歯科医が所見を入力できるシステムや在宅の地域医療連携パスとして、在宅医の治療方針、利用者の生活状況、介護や看護のサービス計画、栄養状態などを入力できる画面もあるが、参加者が限られるため、現状ではほとんど利用されていない。


また、「研究データ」としての活用も想定されている。津梁ネットワークを通じて、沖縄県民の生活習慣病に関する膨大なデータが蓄積されるため、その予防・対策のための統計データとしての活用が期待されている。

クラウド型EHR高度化事業によって参加病院が一気に増加

平成29年度のクラウド型EHR高度化事業によって、新たに16の救急告示病院(うち7病院が地域医療支援病院)の電子カルテ開示がはじまる。連携先の多い中核病院の参加に伴い、診療所や調剤薬局の参加増も期待される。


「中核病院において、最も利用場面が想定しやすいのは退院支援だと思います。患者の入院時の情報を蓄積して退院後にフォローするかかりつけの診療所において活用する、逆に診療所から新規の患者を紹介された時に、これまでの検査データや健診情報を参照するなどの用途があります。スムーズな連携で入院日数が短縮すれば経営的なメリットも出ると考えられます。また、患者の情報が限られる救急外来においては、既往歴や薬歴などの患者情報を取得できる効果が期待できます。このような効果の見えやすい場所からネットワークの活用をはじめていただき、次第に医療現場全体に広がればと考えています」(ネットワーク事務局・向井氏)


今後の課題の一つが、沖縄県との連携となっている。生活習慣病対策や予防医療という目標は同じくしているものの、津梁ネットワークは県医師会の一事業という形であり、県内に別の医療情報連携ネットワークが稼働している、などの点からも、これまで県の主体的な参画には限界があったという。


「県の立場も理解できますが、今後津梁ネットワークを通じた医療連携をさらに広げていくためには、県民への周知や他ネットワークとの連携に関する調整などの場面で県の関与が不可欠です。さらに上手な連携方法を模索していきたいと考えています」(県医師会・平良氏)。

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