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ピックアップ事例

おきなわ津梁ネットワーク(平成25年稼働)
沖縄県医師会(沖縄県)
098-888-0087 公式ホームページ

※平成30年3月時点

計画Step

1.地域課題、要求事項の抽出

構築の命題は「長寿日本一県の復活」

沖縄県は人口144万人、高齢化率(総人口に占める65歳以上の高齢者の割合)は18.5%(平成26年度)と全国平均27.3%(28年度)に比べると圧倒的に低く、長らく「長寿県」として知られてきた。しかし、5年ごとに厚労省から発表される都道府県別平均寿命の最新データ(平成22年)では男性が30位と低迷、女性も1位から3位に転落した。特に、65歳末満の死亡率が男女ともに全国最下位となったことに医療関係者は危機感を募らせた。この大きな要因となっていたのが、脳卒中・糖尿病・心筋梗塞を中心とした生活習慣病であり、県の医療において、若年・中年層の生活習慣病予防、早期発見・重症化予防対策が最優先の課題となっていた。


こうした状況への対策として実行されたのが「地域医療連携パスによる情報共有」である。2000年代に脳卒中から始まり、糖尿病・心筋梗塞という地域医療連携パスを構築し、紙ベースでの情報連携が始まった。さらに、この情報をオンライン化するために専用のVPN網が整備され、情報の電子化が進んだ。こうした背景によって、おきなわ津梁ネットワーク(以下「津梁ネットワーク」という)計画時には、地域医療連携パスのオンライン情報網が出来上がっていた。


「この電子化した地域医療連携パスに特定健康診査と検査データの閲覧機能を乗せられないか、という発想がスタートでした。自治体が行う特定健診のデータがあれば、発見されていない疾患を医療機関で発見したり、未受診者の人に受診を促したりなど、発病前の患者にアプローチできると考えたのです」(比嘉理事)。


カギとなったのは、県医師会と特定健診事業者である保険者(国保連合会・協会けんぽ等)との間の長年の協力関係である。現・県医師会会長の安里哲好氏は、長年に渡ってデータ共有の重要性を周囲に説き、「健診データを使って生活習慣病を予防し、健康長寿県を復活する」という共通目標のもと、長年県医師会と保険者のトップが協議してきた経緯があった。

2.医療情報連携ネットワークの必要性の検討

医療連携パスからのネットワークが話し合いの基盤に

長年の構想が現実的な計画となったのが、平成22年の地域医療再生基金の交付である。ここでも地域医療連携パス構築時からの話し合いの基盤が受け継がれた。地域医療連携パス構築で中心的な役割を果たした沖縄県医師会が、そのまま地域医療情報連携ネットワーク構築の中心機関となった。


県医師会が中心機関となり、広範囲の施設が関わる地域医療連携パスがネットワークの母体であることから、当初から展開エリアは「県全域」を想定していた。検討委員会には医師をはじめ、看護職・リハビリスタッフ・ソーシャルワーカー、行政・保険者など多職種や関係者が参加した。国保・協会けんぽや行政に対しても事務局レベルの交流があり、さらには医師会・歯科医師会・薬剤師会という三師会の連携も取れている状況があったため、ネットワークの構想自体への反対はほぼ生じなかった。


だが、意思決定機関内の足並みは揃っていても、沖縄県においては長年に渡る官民の努力によって医療体制の充実が図られていた(人口あたり医師数は全国平均レベル、北部・中部・南部のエリアごとに中核病院が存在し、離島もへき地診療所やドクターヘリがカバーしており、高齢化率も全国的に見れば低い状態)ため、一部の関係者の間にはネットワークの必要性を疑問視する声もあった。


「実際にネットワークの説明をしている時に、ある医師から『今、特に困っていることはないのに、なんでこれが必要なのか』と聞かれたこともありました」(沖縄県医師会 平良氏)。救急車のたらい回しや産科・小児科医不足などの「目に見える医療危機」とは無縁である分、関係者への説明に苦労した面もあったが、医療情報を共有するメリットを重ねて説明し、理解を求めた。

3.事業概要の決定

当初は4カ年のスケジュールを策定

「生活習慣病対策」というネットワーク構築の目的と「地域医療連携パスをベースにする」という方針が明確だったため、最優先で共有すべきデータは当初から「特定健診」と「検査情報」に絞られていた。特定健診データは保険者(国保・協会けんぽ・後期高齢者医療広域連合等)から提供してもらい、検査データは病院・診療所が外注する検査会社から得ることにした。


その後、全国の既存の地域医療情報連携ネットワークの情報を集め、その他に共有すべきデータや機能に優先順位をつけていった。「在宅医療連携を目的としたある先行事例では、項目が多く、入力が煩雑で結局使われなくなった、という例もあったため、必要とされる項目に絞り込みました」(ネットワーク事務局・向井氏)。

図表:共有情報項目
(○…共有している、×…共有していない)
情報項目 情報の取得元
患者基本情報 ORCA、電子カルテ(予定)
病名 ORCA、電子カルテ(予定)
処方・服薬 ORCA、調剤レセコン、電子カルテ(予定)
注射 ORCA、電子カルテ(予定)
検体検査 電子カルテ、検査システム、外注検査会社
生理検査 電子カルテ(予定)
画像 PACSやその他画像システムの画像を手動アップロード
今後はPACS連携を予定
診療記録(カルテ情報) 電子カルテ(予定)
文書 診療情報提供書、退院時サマリ、検査レポート、手術記録、看護記録/各種システムよりファイル出力したものを手動アップロード
今後はサマリ等をSS-MIX2拡張データとして自動連携予定
バイタル情報 保険者提供の特定健診データ
ADL情報 手入力
その他情報 医療資源マップ、疾病分布マップ(予定)
出所:ヒアリング及び提供資料より作成

平成22年5月、第一次の地域医療再生基金が下りたタイミングで「各疾病パス・特定健診・検査」という最優先データの共有システムを構築するまでの4年計画を策定した。平成22年11月に業者を選定し、開発をスタートさせ、平成23年に協議と開発・修正を行い、平成24年10月に仮稼働、その一年後の平成25年10月に本稼働というスケジュールであり、ほぼその通りに実行した。

図表:計画当時の4ヵ年スケジュール
図表:計画当時の4ヵ年スケジュール
出所:沖縄県医師会提供資料

4.事業運営主体の組織の設置

計画時は疾患別部会とシステム部会をつくる
図表:計画当時の組織図
図表:計画当時の組織図
出所:沖縄県医師会提供資料

【※画像:計画時の組織図※】


県医師会内に「地域医療支援センター(運営委員会)」を設けて企画・運営と意思決定を行う中心機関とし、実行部隊として「地域医療IT連携委員会」(準備段階時まで「準備委員会」)を設置した。


その下部に地域医療連携パス構築時から続く疾患別部会である「糖尿病部会」「脳卒中部会」「急性心筋梗塞部会」を置き、新たにシステム全般の検討を行う「基本情報検討部会」を設置した。


「準備委員会」は事業開始前の議論を担う組織であり、現医師会会長の安里哲生氏(当時は担当役員)が中心となって運営した。ここには安里会長の声掛けによって集まったシステム面における知見を持つ医師が参加し、プロジェクト初期の議論を担った。

「準備委員会」はプロジェクトが本格化した平成22年10月に「地域医療IT連携委員会」に改組され、プロジェクト実行の役割を引き継いだ。

「地域医療IT連携委員会」の下部組織となる「連携疾患別部会」は連携パス構築時からの流れを引く医師・看護師、リハビリスタッフやソーシャルワーカー等が参加する多職種部会であり、それぞれの部会に「準備委員会」に属していたメンバーが入り、システム構築と現場ニーズをつなぐ役割を果たした。

5.個人情報保護方針などの作成

沖縄県医師会が主導し、弁護士らと調整しながら同意書の文言を作成した。同意書は3枚複写方式となっており、事務局・医療機関・本人が保管することとした。

図表:同意書(表面)
図表:同意書(表面)
出所:沖縄県医師会提供資料
図表:同意書(裏面)
図表:同意書(裏面)
出所:沖縄県医師会提供資料

同意書は一回の登録で全施設でのデータ共有に同意する「包括同意」形式を採用した。同意書文面ではネットワークの目的を「治療法の選択・予防対策等の最適な医療の提供」とし、個人情報保護法の準拠と匿名化を条件に、保健医療施設事業にデータを使用する可能性についても明記した。

6.ガイドライン・標準化規格などの確認

開発当初は地域医療連携パスのネットワークを継承し、津梁ネットワークの独自データベースに健診データ・検査データを収集する方式とした。

7.システム化方針決定

地域医療連携パスのネットワークを基盤として、健診データ・検査データを共有するシステムを構築することとした。当初は病院の診療データは連携の対象ではなかったため、電子カルテシステムを基盤とするID-linkやHumanBridgeなどは検討から外れた。

8.事業計画・収支計画立案

平成22年に地域医療再生基金として1.8億円を確保し、計画・構築をスタート。平成24年に二次予算として2,700万円を確保し、平成25年に本稼働した。平成26年度には三次予算の3億円に加え、地域医療介護総合確保金3,700万円を確保し、SS-MIX2対応サーバの置き換えや多職種連携ツールの搭載の費用にあてた。平成29年度に総務省の「クラウド型HER高度化事業」に選ばれ、1億9,000万円の補助金を得たことで、情報収集方法の自動化・高度化など、さらなる機能拡張を図った。


運用開始時は参加施設を増やすため、利用料は無料に設定し、運用費用も基金でまかなったが、将来的には自前で運用できるよう、平成28年4月より利用料の徴収をはじめた。保守運営費用を計算し、目標とする参加率を「全施設の20%」に設定した上で利用料を設定した。

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