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おきなわ津梁ネットワーク(平成25年稼働)
沖縄県医師会(沖縄県)
098-888-0087 公式ホームページ

※平成30年3月時点

全体概要

対象地域 沖縄県全域
構築時の主な関係者 沖縄医師会
沖縄県
費用負担 構築費用:
地域医療再生臨時特例基金(地域医療再生基金)
・(一次) 平成22~25年度:1億8,000万円
・(二次) 平成24~25年度:7,100万円
・(三次) 平成26~27年度:1億8,000万円

地域医療介護総合確保基金 ・平成26~29年度:3,800万円

情報通信技術利活用事業費補助金(総務省クラウド型EHR高度化事業)
・平成29年度:1億9,000万円
<負担者>
・沖縄県
・総務省

運営主体の運用費用:
約1,200万円(年間)
(システム保守650万円・人件費390万円・その他160万円)
※この他に「地域医療介護総合確保基金」2,000万円(29年度)を総合的に運用
※事務局人件費は沖縄県医師会が別途負担

<負担者>
・沖縄県(地域医療介護総合確保基金)
・沖縄県医師会
・参加施設
規模 登録患者数:約3万2000人(利用者カード発行数)
[平成29年11月末現在]

参加機関数:131施設
・病院:22施設
・診療所:78施設
・薬局:29施設(全施設開示・参照を行う)
・介護老人保健施設:1施設
・その他:1
[平成29年11月末現在]
病病/病診連携以外のサービス 特定保健指導支援機能、地域包括ケア情報連携機能、各種統計資料、情報配信機能
図表:主要な構築プロセス
時期 実施内容
平成22年度 地域医療再生臨時特例基金、事業者選定スタート
平成23年度 委員会・作業部会で詳細検討
平成24年10月 脳卒中診療パスでシステム仮稼働
平成25年10月 運用開始
平成26年~27度 SS-MIX2対応サーバに置き換え
平成29年7月 EHRプラットフォーム構築・稼働
平成30年4月~ PHR機能等の構築(予定)
出所:運営主体へのヒアリングに基づき作成

取材対応者

比嘉 靖     一般社団法人沖縄県医師会理事(情報システム担当)/医療法人奨進会東部クリニック院長

平良 亮     一般社団法人沖縄県医師会・業務2課課長

徳村 潤哉    一般社団法人沖縄県医師会・業務2課課長補佐

向井 豊樹    一般社団法人沖縄県医師会・おきなわ津梁ネットワークシステムアドバイザー

狩俣 博昭    一般社団法人沖縄県医師会・おきなわ津梁ネットワーク運営支援スタッフ

概要

おきなわ津梁ネットワークは、沖縄県全域を対象にした地域医療情報連携ネットワークである。沖縄県は働き盛りの世代に脳卒中・糖尿病・心筋梗塞を中心とした生活習慣病の発病率が高く、未受診者も多い、という地域医療課題があった。


そこで沖縄県医師会を中心に「もともと紙ベースで行われていた疾患別の地域医療連携パスの情報共有をオンライン化し、その上に特定健診と検査結果を加えて共有する」というネットワーク構想が生まれた。平成25年から本格稼働した本ネットワークは現在5年目に入り、平成29年11月末時点での参加医療機関は131、利用者数は約3万2000人(対人口比2.2%)となっている。


スタート当初、共有データは健診・検査・地域医療連携パスに限られていたが、システム更新ごとに種類を拡充しており、現在では医療機関の診療データや調剤薬局の処方データなどに広がっている。また、特定保健指導支援や地域包括支援のための情報共有ツールも搭載された。


平成29年度においては、総務省の「クラウド型HER高度化事業」の対象として予算がついたことで、さらにデータ共有の方法を洗練化し、機能面の拡充を進めている。これによって中核・救急告示病院等16施設の参加が新たに決定し、救急医療での利用やパスの充実、在宅医療への利用を念頭にした「高機能EHR」として運用する第二フェーズに入っている。このタイミングで歯科・薬局・介護施設にも広げ、地域包括ケアの情報交換ツールとしての利用促進も図っていく予定としている。

さらに平成30年度以降にかけ、患者本人が健康データを閲覧・管理・利用する「PHR」として展開する、という第三フェーズが計画されている。

図表:おきなわ津梁ネットワークの概要
図表:おきなわ津梁ネットワークの概要
出所:沖縄県医師会提供資料

特徴

・「生活習慣病の早期発見・重症化防止」をコンセプトに、必要な機能に絞られたシンプルなシステム。

・コンセプトに基づき、保険者(沖縄県国保連合会・沖縄県協会けんぽ)からの特定健診データ等の収集を実現。

・当時、健診情報・検査結果の連携を機能の中核に据えた地域医療情報連携ネットワークの先進事例がない中で、独自システムの構築により実現。

・年間約3000万円程度と、全県規模の地域医療情報連携ネットワークとして極めて低いランニング費用の実現。

成功要因

・「システム構築ありき」で検討が進み、結果的に機能や連携される情報が総花的となってしまう事例が存在する中、本地域においては、システムの検討に先立って多職種が参加する地域医療連携パスの検討部会を設置し、地域課題の検討を実施した。その結果、「生活習慣病の早期発見・重症化防止」の課題意識の共有がなされ、その解決に必要な情報・機能への取捨選択を進めることができ、目的に対して必要なものが最低限揃ったシステムを構築することができた。

・「特定健診データ」は保険者において管理がなされ、かつ機微な情報であることから、医療側とのICTを活用した連携実現のハードルが高く、全県レベルで「特定健診データ収集」を大規模に実現している地域医療情報連携ネットワークの例がなかった。本地域においては、医師会と保険者間の交流が従前より行われており、関係者間で信頼関係の醸成と課題意識の共有がなされていた。そのため、「特定健診データを医師に届けるシステムの構築」に向けた合意形成・事業推進を推し進めることができた。

・システム構築に際し、「パッケージありき」で検討が進み、結果的に「ICTによって何を実現するのか」が不明確になってしまう事例が存在している中、本地域においては、県医師会のSEや地元IT関連企業等のICTの知見があるメンバーを加えてコンセプトの実現に向けた検討を進めた。それにより、既存パッケージでは実現は難しいため独自にシステムを構築する判断を下すと共に、前記知見を活用して必要な機能要求を実現可能な仕様にまとめ、本システムを実現するに至った。

・多くの事例においては、データサーバ費用やシステム保守・運用費用がランニングコストを押し上げ、財政を圧迫している。本事例においては、沖縄県国保連合会のデータサーバを共同利用することによってサーバ費用を低減すると共に、大手IT関連企業に比べて人件費・交通費面等で価格優位性のある地元IT関連企業を積極的に活用することで保守・運用費用を低減することができた。

ネットワーク構築時の苦労

・参加施設(医療機関等)の獲得については、特に急性期病院等の大きな組織への説明に時間を要し、今もきめ細かくフォローを続けている。

・利用者(登録患者)の獲得については、加盟医療機関等での受付のほか、事務局が健康関連イベントや自治体の健診会場に出向き、登録ブースを設置して呼びかけを行う取り組み等を続け、地道に増加させた。

・行政(主に沖縄県)との連携関係の構築については、本事業が県医師会の事業(県は財政的な支援等を行う関係)であるため、事業の展開について行政に深く関わってもらうことに制約がある。県民向けの広報などでさらなる連携できないか検討中

運営主体からのこれから医療情報連携ネットワークを構築する方へのメッセージ

私たちの場合、地域医療連携パス構築とその電子化によって、ネットワークの計画当初から医師会と保険者、三師会や行政などの広い範囲に「顔が見える関係」ができていた点が大きかったと思います。特に保険者との連携は健診データ共有やサーバの間借りなど、システムの基幹部分に関わるもので、スムーズなシステム構築や費用低減におけるカギとなりました。


とはいえ、目的を同じくしても、議論の中では当然意見の相違は出ますし、各施設にネットワークの必要性を説明して利用施設を増やすための説得の苦労は、今も続いています。それでも、関係者全員が「この地域の生活習慣病患者を減らす」「長寿日本一に返り咲く」という大きな目標を共有し、プロジェクトの場面ごとにそこに立ち返って、物事の優先順位を付けてきました。大きな目標が一度たりともブレなかったことが、このネットワークをここまでにした大きな要因だと感じます。

また、医師会でSEとして働いた経験のある方がシステムアドバイザーとして参画しており、「当事者目線で考えてくれる専門家」を初期から得られたことも大きかったでしょう。


地域医療情報連携ネットワークの構築は息の長いプロジェクトです。計画時も構築後も、困難な場面は続きます。現在も次のフェーズに移行するにあたって、調整すべき課題が山積しています。それでも、ネットワークの必要性を確信するメンバーがあきらめずに動き続けることでここまで来ました。「成功するまであきらめない」。愚直ですが、最終的にはそこがカギになるのではと思います。

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