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HMネット(平成25年稼働)
広島県医師会・広島県(広島県)
082-568-2117 公式ホームページ

※平成30年3月時点

全体概要

対象地域 広島県全域
構築時の主な関係者 広島県医師会
広島県
費用負担 構築費用:
地域医療再生臨時特例基金(地域医療再生基金)
平成23~25年度:6億円
<負担者>
・広島県

更新費用:
地域医療介護総合確保基金
平成26~29年度:5.8億円
<負担者>
・広島県

運営主体の運用費用:
約7,100万円(年間)
(システム保守費用:約2,000万円、通信費:約2,100万円、事務費用:約2,400万円、その他:約600万円)
<負担者>
・参加機関
※事務局人件費は広島県医師会負担
規模 登録患者数:
・開示カード発行数:5万8,985枚
・HMカード発行数:2万4,435枚
[平成29年11月末現在]

参加医療機関数:979施設
・開示医療機関:31施設
・参照医療機関:403施設
・調剤薬局:246施設(全施設開示・参照を行う)
・介護事業所:268施設
・その他:14(岡山県施設:12/島根県施設:2)
[平成29年2月15日現在]
病病/病診連携以外のサービス 在宅医療支援ツール、ひろしま健康手帳(電子お薬手帳、ヘルスケアポイント、電子版命の宝箱、健診結果、健康管理記録)
図表:主要な構築プロセス
時期 実施内容
平成23年度 地域医療再生臨時特例基金(地域医療再生基金)、機能検討スタート
平成23年度 事業者決定
平成25年度 施設募集・患者募集開始
平成25年6月 モデル事業で運用開始
平成30年4月~ システム更新予定
出所:運営主体へのヒアリングに基づき作成

概要

ひろしま医療情報ネットワーク(HMネット)は広島県と広島県医師会が運営する、広島県全域・人口約285万人を対象とした医療情報ネットワークである。

2000年代、広島県と広島県医師会は、補助金事業として県全域にネットワーク網を独自に構築しており、それを利用した中核病院や自治体が運営する小規模のネットワークが県内各地に点在するようになった。HMネットの当初の構想は、それらの小規模ネットワークをつなぎ、広域にまたがる災害等の緊急時に役立てる、というものだった。

こうした経緯から、特定の電子カルテベンダーやシステム事業者に依拠しないマルチベンダーを前提とし、医療圏や職種にも利用制限をかけない医療情報連携を目指してスタートした。平成25年時点で稼働していた3地域のパイロット事業と4つの中核病院の情報開示事業をモデルとし、運用しながら必要な情報やシステムを協議した。その後、県全域の医療機関・調剤薬局に広げて本格稼働した。

HMネットは大きく分けて、以下の機能がある。
① 中核病院の診療情報を診療所等へ開示する診療情報開示
② 地域連携パスを電子データで情報連携する地域連携パス
③ 処方・調剤情報や健診・検査情報を共有するミニマムデータベース
④ 在宅医療情報を共有する各種グループウェア
⑤ 電子健康手帳など利用者の健康データ管理

現時点では①および③の機能が中心に使われている。

既にあった複数のネットワークを基盤にした、という背景から、現在では、③の情報開示のために中核病院が発行・管理する「開示カード」と、その他の機能を使うための共通IDを記載した「HMカード」の2種類のカードが存在し、利用者は医療機関によってカードを使い分ける必要がある。今後はHMカードに集約していく方向だ。

健診や地域活動に参加するとポイントがたまり、提携する商業施設で利用できる「ひろしまヘルスケアポイント」、広島カープのキャラクターを入れた「カープ版HMカード」といったユニークな仕掛けが奏功し、HMカードの発行数は2万5,000枚を超えた。平成30年1月26日30年にシステム更改を予定しており、救急時や多職種連携に用途を広げる、既存機能の使い勝手を改善する、等の機能を拡充する予定だ。

図表:HMネットの概要
図表:HMネットの概要
出所:広島県医師会提供資料/figcaption>

特徴

・「特定のシステムベンダーに依存しない」のコンセプトに基づいて構築された、マルチベンダーのシステム。

・「中核病院の医療情報開示」から始まりつつも、「健康管理」「救急支援・災害対策」「在宅医療支援」等まで幅広い機能拡張を実現。

・「開示カード」発行枚数58,985枚、「HMカード」発行枚数24,435枚と全国トップレベルの住民参加。

・岡山県「晴れやかネット」との県境を跨いだ医療情報連携ネットワーク間の相互接続。

・年間約7100万円程度と、全県規模で多様な機能を保有する地域医療情報連携ネットワークとして極めて低いシステム保守費用。

・県医師会のデータサーバを共同利用し、構築・保守費用を低減した。

成功要因

・システムベンダー任せで構築を進めていった結果、特定のベンダー依存のシステムっとなってしてしまい、他ベンダーのシステムとの連携が困難になったり、高額な費用が掛かってしまう事例が散見される。本地域においては、県内に既に複数のベンダーによる地域医療連携ネットワークが存在しており、また、持続運用していくための前提条件として、「低コストでのシステム構築・運用」が県医師会の課題意識として最初から存在したいたため、「特定のシステムベンダーに依存しない」とのコンセプトで検討が開始された。また、検討開始後も、県医師会のSEが主導しつつ、地元IT関連企業等のICTの知見があるメンバーを加えて議論を進めていった。その結果、既存パッケージでは実現が難しい部分については独自にシステムを構築する判断を下すと共に、前記知見を活用して必要な機能要求を実現可能な仕様にまとめ落とし込み、本システムを実現するに至った。

・ネットワークの初期構築が完了した後、多様な機能へ展開していくことは困難である場合が多い。本地域においては、構築後も現場へのヒアリングを継続的に実施することによって、機能拡張の要望を丁寧な収集を続けた。その上で、新たな機能を構築する際は、最初から大規模な開発を実施するのではなく、特定の地域で小規模な実証を行うことで、実現可能性・機能の必要性・要件の十分性を検証した。それにより、機能拡張を継続し、多様な機能を実現するに至った。

・一般的に、住民参加に向けた施策を十分に取らずに医療機関頼りとなり、低い参加状況に陥ってしまう事例が多い。本地域においては、行政との継続的な協力関係を背景に、広島県の事業である「ひろしまヘルスケアポイント」とHMネットの機能「ひろしま健康手帳」との連携による参加のインセンティブの構築、広島カープのデザインをあしらった「HMネットカード」の発行を実現した。それにより、普段は医療機関にかからない住民も含めた幅広い層の参加を実現した。

・全国的に見て、県境を跨いだ医療情報連携ネットワーク間の相互接続を実現している例がない。本地域においては、同時期に構築された岡山県の「晴れやかネット」の運営事務局と継続的な勉強会が継続的に開催されており、関係者間で信頼関係の醸成とシステムの相互理解がなされていた。そうした背景の元、隣接する地域において入院・外来双方の患者の行き来が発生していることを踏まえ、岡山県と広島県の間で連携の必要性が合意され、晴れやかネットとHMネットの相互連携を実現するに至った。

・多くの事例においては、データサーバ費用やシステム保守・運用費用がランニングコストを押し上げ、財政を圧迫している。本事例においては、広島県医師会のデータサーバを共同利用することによってサーバ費用を低減すると共に、大手IT関連企業に比べて人件費・交通費面等で価格優位性のある地元IT関連企業を積極的に活用することで保守・運用費用を低減することができた。

ネットワーク構築時の苦労

・スタート時の参加病院以外の中核病院に参加を促すこと。既に自前のネットワークを持つ施設も多く、システム更新タイミングを待つなど、時間をかける必要があった。

・診療所の参加を募るための説得。各地域の医師会に依頼し、医師と県の担当者が出向いて説明会を開き、参加を募った。

・ネットワークの運営負担の医師会への集中。行政からの一定の協力関係は存在しつつも、運営業務や人件費は医師会が負担している現状がある。そのため、費用面・人員面等、医師会以外の支援体制の構築が課題となっている。

運営主体からのこれから医療情報連携ネットワークを構築する方へのメッセージ

HMネット構築時には、ネットワークのインフラは既にあり、それを使った医療情報ネットワークが県全域に点在している状況でした。「まずはそれをつなげよう」という発想が最初にあったので、一からシステム構築をしようという地域とは少し事情が違うかもしれません。


私たちが重視したのは「他地域の例を見る」「小さくはじめる」「全部自分たちでやろうとしない」ことです。


今から情報ネットワーク構築に取り組むのであれば、全国に先行例がたくさんあります。「全部自分たちでやる」と思わずに、たくさんの例を見て、話を聞き、よいところはどんどん取り入れていけばいいと思います。システムも一からつくるより、既存のものを利用したほうがずっと安くつくはずです。


また、3地区・4病院ではじめたモデル事業もよい取り組みでした。まずは「はじめてみる」ことで、必要なもの・不要なものが見えてきます。大きなシステムを作り上げてからでは変更も更新も大変ですが、小さいうちに問題点を見つけて修正を続けることで、本格構築がぐっとラクになります。


事業者がプロジェクトの主要部分をしっかりハンドリングすることは重要ですが、人的リソースには限りがありますから、状況に応じて外部の力を借りることも必要だと思います。私たちは住民向けの広報を外部のPR会社に依頼しましたが、自分たちでは出てこないプロならではのアイデアが出てきて、とても助かりました。


構築から5年目を迎える平成30年にはシステム更改のタイミングを迎えます。関係者にヒアリングをしましたが、今でも「こんなものは必要ない」「使い勝手が悪い」といった厳しい声を頂きます。でも、その声をしっかり聞き、地道に改善を続ける。その繰り返ししかないと思って取り組んでいます。

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