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ピックアップ事例

あじさいネット(平成16年稼働)
特定非営利活動法人 長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会(長崎県長崎市)
095-844-1111 公式ホームページ

※平成29年2月時点
(ただし、登録患者数や参加機関数は、平成28月11月15日時点の情報を掲載)

全体概要

対象地域 長崎県全域
※ 運用開始当初は長崎県大村市と諫早市
構築時の主な関係者 大村市医師会
国立病院機構長崎医療センター
市立大村市民病院
関係医療機関
費用負担
※構築費用はデータ出力対応費を含まない
構築費用:
約2,000万円
<負担者>
・大村市医師会
・開示施設
・長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会
運営主体の運用費用:
非公開
<負担者>
・参加機関
※機能追加・拡充は長崎県(地域医療再生基金、地域医療介護総合確保基金)
規模 参加患者数: 61,134人
参加機関数: 323施設
・開示施設 32施設
・閲覧施設 293施設
※病院・診療所203施設
薬局 70施設
訪問看護・介護19施設
[平成29年2月15日現在]
病病/病診連携以外のサービス 遠隔画像診断(離島・僻地画像診断支援、遠隔読影サービス)、薬局との連携サービス、糖尿病疾病管理、多職種連携(在宅医療)、周産期医療支援、テレビ会議、講演中継システム、ビデオ配信、セキュアメール、検査データ共有サービス、地域連携パス(テスト中)

概要

あじさいネットは、大村市でスタートした後、長崎市に展開、広域化により開示施設(あじさいネットでは情報提供病院と呼んでいる)が増え、運用開始から12年間で長崎県全域において運用されるシステムに発展した医療情報連携ネットワークである。地域医療の主体は「かかりつけ医」の考え方のもと、地域医療の中核となる病院(中核病院)の診療情報やノウハウ公開により、診療所の診療支援と生涯教育支援、それらを通じた地域全体の医療の質向上を目的として構築され、平成16年11月に稼働した。

当初は、中核病院の診療情報を診療所と共有する病診連携や病薬連携を行う医療情報連携ネットワークとして運用を開始した。その後、医療情報連携ネットワークの強固なセキュリティ基盤を活かして、多職種連携、遠隔画像診断、周産期医療支援、テレビ会議、ビデオ配信、セキュアメール、検査データ共有サービスなどの機能を拡充し、地域連携パスや地域包括ケアシステムへの展開も予定している。あじさいネットの運用により、地域連携の活発化(紹介・逆紹介の増加)、病診連携の強化や重複検査の抑制などの効果が上がっている 。

図表:あじさいネットの概要
図表:あじさいネットの概要
出所:あじさいネットホームページ

特徴

医療情報連携ネットワークを構築したものの利用率の低迷や運用停止に至る事例がある中で、あじさいネットは運用を12年間継続していること、また対象地域が構築当初から広域化し、長崎県全域で利用されるに至ったことが特徴である。

継続運用を実現している要因の一つは、医療従事者へのアンケートを繰り返すことでたどり着いた診療所の「紹介メリット(インセンティブ)」を考慮した医療情報連携ネットワークの活用方法が挙げられる。病院から診療所への患者の逆紹介を通じて診療所の生涯教育を病院が支援するというものである。

診療所は、紹介する手間などにより患者を紹介するインセンティブが下がってしまうことがある。そこで、様々な症例、専門分野の知見やノウハウ、高度医療機器が集中している中核病院が、それらを地域の財産として診療所と共有すれば、診療所は患者を紹介し、退院後に逆紹介してもらうことで病院での診療内容や患者の診療過程を正確に把握し、日進月歩の最先端医療をより具体的にタイムリーに把握することができる。これにより、診療所のインセンティブが高まることに加えて診療機能が高まり、病院が逆紹介がしやすくなり、結果的に地域全体の医療の質向上につながっている。

あじさいネットでは、診療所の学習ニーズに応えられるよう、患者の同意を得て、医師記録や看護記録を含む電子カルテの全情報項目を開示することを前提としている(実際の開示範囲は開示施設ごとに異なる)。

「主治医意見書や看護師への訪問指示書などを書く際、あじさいネットを利用して情報提供病院の先生方の記事を参考にしている」(診療所医師会員)、「基幹病院にかかっている患者にはハイリスク薬が処方されている。あじさいネットを使用して薬物血中濃度を含めた検査結果を確認すれば明確な判断のもとに疑義紹介や調剤を行える」(薬剤師会員)などの利用者の声があり、診療支援機能と生涯教育支援機能は、閲覧施設にとってメリットとなっている。

成功要因

あじさいネット構築を検討していた当時、医療情報連携ネットワークの失敗事例を分析した。
その結果、
① 実証実験に終始してしまい運用ニーズを捉えていないこと
② 医療従事者間の協力体制が不十分であること
③ 診療所側のデータ入力負荷が高いこと
④ 初期費用が高く維持費用が出せないこと
が失敗の原因と整理した。

そこで、啓発によるニーズの創出と利用者の負担軽減や利便性向上にこたえるシステム構築に取り組んだ。運用開始前に医療関係者に対するアンケート調査を複数回実施した。また、講演会やパソコン操作教室、医師会報などの場でシステムの使い方の講習を行い、医療情報連携ネットワークについて積極的に発信した。

また、あじさいネットの構築にあたり、検討組織は病院と診療所が対等に検討できる場とした。多くの医療機関が立地する長崎市に展開した際には、準備期間に5年の歳月をかけた。これにより、あじさいネットの運用のあり方について関係者内で納得するまで議論し、合意に至った。結果的に会費による自主運用の目途をつけることができた。

システム面では、あじさいネットは病院のみが開示施設となり初期費用を負担する仕組みと割り切ることで、診療所側のあじさいネットへの参加に伴う負担を軽減した。また、地域でサーバを持たない仕組みにより初期費用を低額にした結果、補助金に依存することなくあじさいネットを構築、システムの維持費用や更新費用も過度にならず、会費の範囲で継続運用が可能となった。

ネットワーク構築時の苦労

当時、補助金の存在を知らなかったこともあり、自主財源で医療情報連携ネットワークを構築する前提で検討した。構築費に充てる資金の工面に苦労したが、大村市医師会の借入により構築することができた。返済義務が発生したことで絶対に失敗するわけにはいかない、という気持ちになり、費用面で無理のないシステム構築を行った。運用前のアンケート実施によるニーズ確認や啓発活動の結果、運用開始時点で、大村市の当時の医師会会員の半分の31診療所が閲覧施設として参加した。これにより、借入金を返済する目途が立ち、あじさいネットの運用を開始することができた。

運営主体からのこれから医療情報連携ネットワークを構築する方へのメッセージ

まず、目的を明確にすることである。医療情報連携ネットワークを安易に構築するケースもみられるが、そのようなICT導入やシステム構築が目的ではうまくいかない。まず、地域医療での課題を明確にしその解決法として何の機能が必要か充分に議論することが必要である。

次に、目的が明確となったらそれを十分に伝えることが必要である。つまり徹底した啓発活動が必要である。医療連携のニーズは潜在的ニーズであって、必ずしも顕在化していない。顕在化させるには、どのように使うのかイメージがわくような啓発が大事である。その結果はじめて、利用のモチベーションとなり目的を達成することができる。充分に活用すれば、医療情報連携ネットワークは日常業務において手放せなくなる。

目的が明確で有益な取り組みも継続費用の面で失敗するケースがある。構築費用が高いと維持費用や更新費用が高額になり、維持できなくなるのである。このため初期費用をかけすぎないことが大事である。

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